「住民税非課税世帯に給付金が…」というニュースを何度も聞くたび、「非課税世帯はうらやましい」と思った経験はあるのではないでしょうか。
実際、住民税非課税世帯は収入が非常に低い分、公的制度で様々な恩恵を受けられます。
ただしメリットが多い一方でデメリットもあるため、一緒に知っておくと今後ニュースを見る上で参考になるでしょう。
本記事では、住民税非課税世帯が抱えるメリットを、デメリットも交えながら解説します。
住民税非課税世帯とは

ニュースなどでよく耳にする「住民税非課税世帯」というワード。具体的にどんな世帯なのかがよくわからない方もいるのではないでしょうか。
ここでは住民税非課税世帯の定義について、簡単に説明します。
収入が水準以下で住民税が課せられない世帯
住民税非課税世帯とは、収入が一定の水準を下回っていて、住民税が課せられない世帯です。
具体的には、1月1日時点で日本国内に住所があり、一定の条件に当てはまる対象者が非課税世帯とみなされます。
ご自身が住民税非課税世帯であるかどうかは、毎年5月から6月に役所から送られてくる住民税額決定通知書で確認が可能です。
またご自身で役所に問い合わせての確認もできます(電話で回答してもらえないケースあり)。
通知書に税額ではなく米印が印字されていれば、1年間住民税を納める必要はありません。
加えて住民税非課税世帯は、国民年金や国民健康保険の保険料の減免など様々な面で優遇措置を受けられます。
完全非課税の場合と所得割のみ非課税の場合がある
住民税非課税世帯には、大きく分けて住民税が完全に非課税になるケースと、住民税のうち所得割だけ納めずに済むケースがあります。
住民税は大きく分けて、前年の所得(年収から経費や控除額などを引いた金額)の10%分を課税する「所得割」と、住民全員に均等に加算される「均等割」から構成されます。
ちなみに2024年度から課税され始めた森林環境税も、均等割に含まれる部分です。
このうち完全に非課税になるケースとは、所得割と均等割の両方が課税されない場合を指します。
完全に非課税になる世帯の条件は、次の通りです。
- 生活保護を受給している人
- 前年の総所得金額が135万円以下の障害者や未成年者、寡婦・ひとり親
(給与年収で204万4,000円未満) - 前年の合計所得金額が45万円以下の扶養親族がいない人
- 前年の合計所得金額が以下の計算式(※)の金額に届かない扶養親族がいる人
※35万円×世帯人数+31万円
→世帯人数が2人なら、35万円×2人+31万円=101万円
世帯人数が4人なら、35万円×4人+31万円=171万円
(参考:個人住民税|総務省)
一方で所得割だけが課税されない人の条件は、次のように決まっています。
- 前年の合計所得金額が45万円以下の単身世帯
- 前年の合計所得金額が以下の計算式(※)の金額に届かない扶養親族がいる人
※35万円×世帯人数+42万円
→世帯人数が2人なら、35万円×2人+42万円=112万円
世帯人数が4人なら、35万円×4人+42万円=182万円
ただし、自治体によっては基準となる所得額や計算式の数字が異なる場合もあります。
詳しくはお住まいの自治体の公式サイトをご確認ください。
また住民税が高い理由については、以下の記事も参考になります。

住民税非課税世帯が受けられる6つのメリット

住民税非課税世帯といえば、「臨時の給付金をもらえる」といったメリットが色々あるイメージを抱いていませんか?
実際住民税非課税世帯は収入・所得が少ないこともあり、様々な恩恵を受けられます。主なメリットが次の6点です。
| メリット | 概要 |
|---|---|
| 非課税世帯向けの給付金 | 景気変動などの際に給付対象になりやすい |
| 保険料の軽減 | 国民健康保険や国民年金の保険料が軽減・減免される |
| 医療費の軽減 | 高額療養費制度や入院中の食事代などの自己負担が軽くなる |
| 介護費の軽減 | 介護サービス利用料の自己負担額などが軽減される |
| 教育費や保育料の軽減 | 大学の授業料や、保育料の軽減・減免を受けられる |
| NHKの受信料免除 | 条件を満たせば免除 |
非課税世帯向けの給付金の対象になりやすい
住民税の非課税世帯は、時として給付金の対象になるケースが多いです。特に2020年度以降は、コロナ禍や物価高を背景とした非課税世帯向けの臨時給付金が数度支給されています(なお2020年度のものは全国民に支給)。
| 年度 | 給付金の名称 | 支給金額 |
|---|---|---|
| 2020年度 | 特別定額給付金 ※全国民対象 | 1人当たり10万円 |
| 2021年度 | 子育て世帯等臨時特別支援事業給付金 | 1世帯当たり10万円 |
| 2022年度 | 電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金 | 1世帯当たり5万円 |
| 2023年度 | デフレ完全脱却のための総合経済政策給付金 | 1世帯当たり10万円 |
| 2024年度 | 低所得者給付金(非課税世帯) | 1世帯当たり10万円 (18歳以下の扶養している子どもがいる世帯は、子ども1人当たり5万円加算) |
| 2025年度 | 1世帯当たり3万円 (18歳以下の子どもがいる世帯は子ども1人につき2万円加算) |
なお、上記の給付金は国の決定を経て自治体から支給されたものです。他にも自治体が独自に給付金を支給するケースもあります。
住民税非課税世帯は所得が低い分、経済変動の影響を受けやすい点も特徴です。コロナ禍や物価高のような状況で生活が苦しくなりやすいため、政府や自治体がしばしば給付金の支給対象としています。
国民健康保険料や国民年金保険料の軽減・減免の対象になる
また国民健康保険料や国民年金保険料の支払いで、軽減や減免の対象とみなされる点もメリットです。
国民健康保険の保険料は、前年の所得額に応じて決まる仕組みです。前年の所得が自治体の定める水準を下回っていた場合、支払うべき保険料が2割・5割・7割減らされます。
国民年金保険料についても、前年の所得額(1~6月に申請する場合は2年前の所得)が一定額を下回る場合、4分の1・半額・4分の3・全額のいずれかに減免されます。
なお、減免を受ける場合は、事前に自治体や日本年金機構への手続きが必要です。
手続きしないで放置すると未納扱いになり、最悪の場合で財産が差し押さえられることもあるため、注意しましょう。
ちなみに国民健康保険料が高くなる理由については、以下の記事もご覧ください。

医療費や入院中の食事代の自己負担額が軽減される
病気やケガの治療に必要な医療費や、食事代など入院中の自己負担額が軽減される点も、メリットの1つです。
医療費の場合、高額療養費制度の自己負担額の上限が引き下げられます。
高額療養費制度は、公的医療保険が適用される医療費が月の上限を超えた場合、差額が戻ってくる制度です。
そして現行の高額療養費制度(2026年7月まで)の場合、70歳未満の非課税世帯であれば、月当たりの自己負担額の上限が3万5,400円です。しかも差額の支給が1年で4回目以降であれば、2万4,600円にまで下がります。
一方、70歳未満・年収約370万円~約770万円の方で月の医療費100万円かかった場合は、自己負担上限額が約8万7,000円です。
これに加え、入院中の食事代の自己負担額も、住民税が発生している世帯のおよそ半分にまで下がります。
このように住民税非課税世帯は医療費や入院中の食事代の面でも、経済的負担が軽減されます。
ただし、高額療養費制度については2026年8月から2027年8月にかけて上限額が変動するため、今後の動向にご注意ください。
介護サービス利用料の自己負担額が軽減される
住民税非課税世帯は、介護サービス利用料の自己負担額が軽減されます。
介護サービス料とは、公的介護保険を利用する際に支払う料金です。
公的介護保険では介護サービス料の自己負担分は1割から3割と決まっているとともに、上限額を超えた場合は差額が戻ってきます。
住民税非課税世帯であれば自己負担額の上限額は比較的低く抑えられるため、サービス料が高額だった場合でも差額が戻ってくる機会も多いです。
なお、公的介護保険の保険料についても、非課税世帯は安く抑えられます。
保険料は自治体によって金額は異なるとともに、自治体の決めた所得区分に応じて支払う金額も様々です。
ただ非課税世帯であれば、低い所得区分に分類されるため、保険料の支払い負担も軽く済みます。
大学の授業料や保育料の減免が受けられる
住民税非課税世帯は教育関係でも、様々な優遇措置を受けられる点がメリットです。
まず大学の授業料の場合、非課税世帯の学生は2020年度から始まった高等教育の修学支援制度により、授業料や入学金の減免を受けられます。
加えて日本学生支援機構の給付型奨学金(卒業後返さなくて良い奨学金)の対象です。
参考:学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度|文部科学省
また保育所の保育料についても、非課税世帯は減免措置を受けられます。
保育所の保育料は3歳から5歳までの子どもたちは、所得に関係なく全世帯が無料です。
そして非課税世帯は、0歳から2歳の子どもも無償化の対象とされます。
このように非課税世帯は、教育関係でも様々な面で費用の優遇が受けられる対象です。
NHKの受信料が免除される
他にも一定の条件を満たす場合、NHKの受信料の免除を受けられます。
具体的には世帯に属す人が全員非課税で、世帯の中に身体障害や精神障害、知的障害を抱えた方がいる場合が対象です。
なお、親元が住民税非課税世帯である場合、離れて暮らしている学生もNHK受信料の支払いは免除されます。
参考:受信料免除の対象となる方について|日本放送協会(NHK)
【いいことばかりではない】住民税非課税世帯が抱える4つのデメリット

住民税非課税世帯はメリットばかりのように見えて、デメリットも何点か存在します。主なデメリットが次の通りです。
| デメリット | 概要 |
|---|---|
| 審査が厳しくなる | 賃貸やクレジットカードの契約審査が通りにくい |
| 公的年金が少なくなる | 保険料免除の期間が長いと将来の受け取り額が減少 |
| 制度変更 | 将来の制度変更で対象外になることも |
賃貸住宅やクレジットカードなどの審査が厳しくなる
住民税非課税世帯の場合、賃貸住宅やクレジットカードなどの審査が厳しくなります。
非課税世帯であることは、「住民税を支払えないほど所得が少ない」ことを意味します。
このため、クレジットカード会社などローン審査をする側から「毎月の支払いが滞るリスクがある」と思われがちです。
将来受け取れる公的年金が少なくなる
また住民税非課税世帯は、将来受け取れる国民年金などの公的年金の受給額が減る場合があります。
非課税世帯は国民年金保険料が最大で全額減免されます。
ただし減免を受けた期間の保険料は、そのまま支払わない状態だと保険料を全額支払った場合に比べて年金の受給額が下がる仕組みです。
これは全額を支払った場合に比べると、減免した金額分は将来受け取れる年金額に反映される割合が低いためです。
なお減免措置が適用された期間分の保険料は、10年以内であれば追納できます。
追納によって受け取れる年金額を満額に近付けられるため、経済状態に余裕があるときに減免分の支払いを済ませておくのがおすすめです。
制度変更によって非課税世帯の対象外になることがある
他にも、将来の制度変更によって非課税世帯の対象外になるリスクもあります。
非課税世帯になる判断基準は数年に1度見直されるためです。
最新でも2026年に住民税のうち均等割が非課税になる所得基準が、単身世帯の給与収入で100万円以下から170万円以下へと大きく引き上げられています。
ただ今後の基準の見直しによっては、逆に所得基準が引き下げられる可能性も0ではありません。
その場合、年収額によってはそれまで非課税世帯と扱われていたものが、住民税の課税対象になるケースがあるため、最新の動向への注目は欠かせません。
住民税非課税世帯の2つの注意点

年収が低くても所得次第で非課税とみなされないケースがある
まず年収が低くても、所得額次第では非課税とみなされない場合があります。
その年の住民税が非課税になるかどうかは前年の年収ではなく、所得額によって決まるためです。
私もある年の年収が100万円台だったことがありましたが、所得額が住んでいる市の水準を超えていたため、数千円程度の住民税が発生していたことがありました。
このため、「年収が低い=非課税になる」とは限らない点に気を付ける必要があります。
配偶者や親族の扶養状況によって判定が変わる
加えて、世帯の扶養状況によっても非課税かどうかは変わってきます。
世帯に扶養親族がいる場合、世帯主も含む世帯全員の所得が非課税の条件を満たしていなければ非課税世帯として扱われないためです。
例えば、夫の所得だけが非課税の水準を超えていれば、たとえ妻以外の家族が扶養に入っていて非課税であっても、住民税を支払わなければなりません。
このため、扶養家族がいる世帯では、全員が非課税になっているのかを確認する必要があります。
非課税世帯のメリットでよくある質問
非課税世帯は優遇されすぎじゃありませんか?
住民税非課税世帯は税金だけでなく年金や健康保険、教育費などで様々な優遇措置があるため、「優遇されすぎ」と思われることも少なくありません。
ただその一方で、収入や所得があまりにも少ない分、物価高をはじめ経済情勢の変動の影響を受けやすい存在です。
このため、政府や自治体は非課税世帯の経済的な負担を和らげる目的で、しばしば非課税世帯に様々な救済措置を施します。
住民税の非課税世帯はお金持ちなんですか?
住民税非課税世帯の中には収入や所得が少ないものの、実際のところお金持ちであるケースも存在します。
というのも、非課税世帯かどうかを判定する基準に貯蓄額は含まれないためです。
仮に前年の年間所得が50万円程度で住民税が課税されない世帯があったとしても、その世帯に5,000万円の貯蓄があれば、「お金持ちの非課税世帯」が誕生する場合もあります。
住民税の非課税世帯になる裏ワザを知りたいです
「裏ワザ」で住民税の非課税世帯になるには、理屈の上では基礎控除などの所得額を減らす控除や、家族で世帯を分ける世帯分離などの方法があります。
これらの方法で世帯全体の所得を自治体の定める水準以下にすれば、非課税世帯とみなされるでしょう。
ただし、無理やり非課税世帯になろうとして世の中に出回っている裏ワザを駆使した場合、違法な手段に手を染めるリスクがあります。
このため、無理してでも非課税世帯になることにこだわるのではなく、合法的な手段で税負担を減らすことが大切です。
年金をもらっていますが住民税の非課税世帯になるには?
年金を受け取っている世帯が住民税を非課税にする場合、65歳以上かどうかや家族構成、住んでいる地域、年金収入が判断基準になります。
東京など大都市圏(一級地)であれば、次の通りです。
- 65歳以上:夫婦世帯は世帯主が211万円以下、配偶者で155万円以下、単身世帯は155万円以下
- 65歳未満:夫婦世帯は世帯主が171.3万円以下、配偶者で105万円以下、単身世帯は105万円以下
なお大都市部は全国で最も高い水準が適用されるため、地方であればさらに低い年金収入で非課税世帯とみなされます。
まとめ

住民税非課税世帯は前年の所得が一定の水準を下回る分、臨時の給付金の対象になったり年金保険料の減免を受けられたりするなどの措置を受けられます。
ただ一方で、所得の低さからローン審査が厳しくなったり、将来受け取れる年金が減ったりする点などがデメリットです。
このため、住民税非課税世帯も決してうらやましい存在とは言い切れません。
今回見てきた住民税非課税世帯の現実を知っていれば、今後非課税世帯に関するニュースもより冷静に見られるでしょう。
2017年からフリーランスのWebライターとして活動しています。
フリーランスとして活動するうち、税金などお金にまつわる知識の重要性に気付くように。
複数の金融系執筆案件に参画し、FP2級も持っています。
実体験をベースに税金やお金の情報を鋭意発信中。

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